ホラー映画「ソウ」音響作業中に通報され……ますよね。

ホラー映画「ソウ」音響作業中に「誰か拷問されている」と通報される(シネマトゥデイ2023.9)

こんなニュースがありました。
ミックスの前段階の仕込み、つまりサウンドエディット時なら
ダビングステージと呼ばれる完全防音の音のスタジオで作業してるわけでもないので
こういうことはありえるかと……。
少し笑ってしまいました。業界あるある、かもしれませんね。

私も以前つとめていた場所での作業で、

試しに窓を開けて
外にどれぐらい音がもれるか?

を後輩に確認してもらったことがありました。
結果は 「ダメです!やばいです!戦争です!」
でした。
5.1chの作品で戦闘激しかったのかな……。
どの作品かは覚えていないのですが、*85dbのモニターレベルで鉄筋コンクリートの建物でしたが
窓開けたらダメですよね。という。
鉄筋だと夏の日差し浴びて、夜になっても温まったコンクリートから
出てくる熱で岩盤浴のようになりノボセるんで、窓開けたかった……。
そんな動機でした。



アメリカのsound editの現場の実情を存じていないので、詳しくは
わからないのですし作品それぞれの制作環境次第ですが、

ホームスタジオのようなケースでサウンドエディットする。

これは十分ありえるのかな。と思いました。

日本と海外の我々の仕事の違いでは、セリフを扱うダイアローグエディターが
わりと日本の音響効果のチームと並列で距離が近いのかな?という。
このSAWの方は、

sound effectのeditorで効果音を作業していたのか?

それとも
dialogue editorでセリフの編集作業をしていたのか?

それとも
Re-recording mixerで効果音とセリフのプリミックス、ステムミックス探っていたか?

このあたり興味深いです。
おそらく、効果音が様々、猟奇的な音を立てつつ
ガイド音声としてセリフはあるけど、セリフを編集していたわけじゃないのかな?
という気がします。
プレイバック(映像、音声を再生をすること)の回数が多くなるのは
セリフよりも音を重ねたり微調整をする効果音の編集時の方が多くなるのが常かなと。

ホラー映画といえば。そういえば

13日の金曜日とか誰も言わなくなったなぁ。

と。
私自身、13日の金曜日って映画でしたっけ?フレディが出てくるんでしたっけ?
なんだか色々ごっちゃになってしまってよく覚えていないのですが……。
来週の2023.10.13は13日の金曜日のようです。

おまけ モニターレベルの話。

*85dbのモニターレベル:映画館でかかる作品はこの音量値で制作すること、
と規定されている音量の基準値です。同じ5.1または7.1chのサラウンドフォーマット
で制作する場合でも家庭用、ホームシアター用、ニアフィールド(動画配信系も含まれる)
のと呼ばれる視聴環境では83dbを推奨される値でもあります。
その音量で聴きながら、音を編集する、調整する、詰め込んでいく。という感じです。

この85dbとか83dbというのはモニターレベル。
と呼ぶわけです。モニターレベルってかなり重要な話なのです。
(我々の音響の仕事だと、音を聞く道具のスピーカーをモニターと呼んだりします。
モニタースピーカー、スタジオモニター。とか。通常はモニターというと
TV的な、映像をだす画面さしますので、ややこしい。
モニターレベル。となると、これは音響の音量のことしか指さないかと思います。)

ミックスに立ち会っている人が聞いている音量というのは
技術者、作業者が(作業しやすい、つまり狙った最終形に落とし込みやすい)きめた
そのスタジオの設備でのモニターレベルによってきまっているわけです。
絶対値としての、音楽やセリフ、効果音の音量が、その出てきている音とイコールではないです。

モニターレベルがやたら大きいが、上がってきた納品物は音量が小さい
または
モニターレベルは小さかったが、納品物の音量は大きい

こういう経験。あると思います。一体、何が正解で、何を聞けばいいのか?と。
長くなるのでこの話はまた別の機会に。

聞くポイントはあくまで相対的なバランスを気にした方がいい。とはいえます。
セリフの対しての音楽。とかセリフに対しての効果音。のように。
セリフ、音楽、効果音、3すくみを一度で全部聞けるのはある種の才能で
最初は少し難しいかもしれません。
ひとつの音や事象に対しての絶対的な音量を求めない方がいいです。
優れた作業者なら、リクエストの意図を汲んで、あらゆる手段で求められているものを実現します。
が、そうではない担当の場合は、指示した通りのストレートにしかオペレートしません。

例えば、爆発音を大きくしてほしい。という言葉を伝えた場合、
単純に爆発音を大きくする。(入れられる音量には限界がある)
これしかできないレベルの作業者のケースがあるわけです。

爆発音を大きくする。
その意図が現象としての大きさを説明したいとか、印象に残したい。際立たせてほしい。
というふうに解釈してくれたりコミュニケーションできる、または超感覚の勘で
意図を汲み取ってくれるスーパーでハイパーな作業者の場合は、
前後の音の音量や背景音、音質を調整して、爆発音をいじらずともそれを実現する。
さらにはそれらを加味した上で、さらに爆発音を調整して実現する。
このようなことが行えるのがプロ技術者です。

どちらのケースでも後日、通しで映像を見た場合はかならず
その効果のほどや悪目立ちして意図が叶えられたか、そうではなくなっているかは
一目瞭然になっているはずです。



モニターレベルは詳しくは別の機会に記載しますが、再生される視聴環境でも常識的には

家庭で83dbとか85dbを出せるか?というとそれなり浮床の防音室にでもしていないか、
隣家と離れていないと厳しい。ほぼ無理じゃないかと。


木造の家などでは窓サッシやガラスが共振してビビったりもすると思われます。
ちなみに通常の家庭のリビングでの再生音量は50~70dbぐらいだと思われます。

10db(デシベル)違う。とかって話になると音圧で3倍、電力で10倍。
みたいな見慣れない話になってしまうので割愛します。


映画館でもシネコンなどで他のテナント様へ音がもれるので85dbの音量で
再生してね!というお約束なのですが、守られない部分も多々あります。
最近は工法も進化していて、遮音、吸音、防音の性能もあがってますが、
音は空気と躯体振動でもって階上や階下、空調ダクトを通って漏れます。


弊社環境はRc造の建物でありつつ、隣家と空気の壁もあるので85db、
何時に出しても大丈夫!!なので、ですが屋内の低音の伝播は漏れますので
これは寝静まった家族には大迷惑な話。深夜帯の作業は年に数回にとどめています。
この音量で作業できるかできないか?ラージのモニターで作業できるかどうか?
これが最終的な仕上がりとミックス時の作業効率に直結しているんですね。
これを実現するのに、時間とお金がとてもとてもかかりました。

例えばTVの音量って何db(デシベル刻み?)
私の感覚だと、例えばsONYのTVのリモコンで操作する音量、
あれを1つあげると1.5db以上はあがるのかな?という感じです。
この刻みはメーカーによって違いますし、この手の機材は高価なものほど
“1”あたりの刻みが細かい。と思ってよろしいかと思います。
(内部に搭載される増幅アンプ部分の性能の影響かと。)



今、この記事を打っているMacBookAirでの音量刻みは1回、
音量ボタンを押すごとに4dbぐらい変わる感じします。


ちなみにMacでは shift + option キーを押しながら音量ボタンを押す

これでより細かい音量調整が可能です。

この場合が1db刻みな感じがしますね。
信号と音圧計で計測したわけではありませんが、

この仕事をしていると絶対値としての音量がわかるようになってきます。
絶対音量。とでもいいましょうか。
ここまで言っていて間違っていたら衰えた証拠で恥ずかしいですね。


私はミックス作業での経験で音量を上げたり、下げたり、の調整をリクエストされて
いろいろな人からフィードバックもらいます。3dbの違いがわかる人はなかなか敏感な人です。
1.5db~2.3dbぐらいの微調整でもわかる人はいます。
6dbぐらいの調整となると流石にほとんどの人は認識できるようです。
8db~10dbの違いは、だいぶ違うので大きくなった、小さくなったな。
とは感じられると思います。

とはいえ、TVの2chステレオフォーマットで8db以上の音量差を作るのは
至難の技というか、何かを切り捨てるしかない表現なので諸刃の剣です。
現在ではあまり音量差があるミックスは配信等では推奨されてませんし、
視聴している人たちの感想や様子をみていても、突発的な音量差は
好意的には思われていないように私は思います。
昭和の時代ではイナ至上主義みたいな感じで
映画館でかかる案件でレンジがない音付やセリフ、音楽の抑揚、
ミックスでもしていようものなら、
「TV番組じゃねーんだから何考えてんだ?
そんなものお客さんに聞かせるつもりか?アホか!」
バカにされる感じの風潮でした。
(ダイナミックレンジというのは音量が小さいところと大きいところの幅のこと。)

デジタル領域での作業による影響、つまり音質のせいで
レンジあると刺激的にキツイ。とか、世の中のものが
整えられたものが増えて、それに慣れているであろうことも多分にあるのですけども。

最初からなんのトレーニングもなく1dbの違いがわかる、しかも帯域ごとに。
とかの人はものすごく才能があるのでそういう仕事をしたほうがいいです。
音楽のマスタリングエンジニアとか、工業製品の官能評価などの仕事ですね。
色の解像度が4原色で何億色認知するという非常にレアな方が絵やカラーに
かかわる仕事をするような感じで。

4原色の色覚を持ち、常人の100倍の1億色を視ることのできる女性画家(Buzzap!2014)


おそらくそんな人は数千人から数万人に一人しかいないのではないでしょうか?
耳は年齢で高音域の感度はおちておとろえていきますが、
鍛えることができます。音の仕事につきたいかたは、鍛えるとともに
痛めないように大事にすることも心がけてほしいですね。

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この記事を書いた人

Hkurahashiのアバター Hkurahashi 代表取締役社長

株式会社オトナリウム代表取締役社長  
好きな言葉は  楽しみは春の桜に秋の月 夫婦仲良く三度くふめし

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